インタビュー

季節感を盛り込んで、気負わないおもてなしを

料理教室『Y's Table.』主宰中村 美穂

まるで親しい友人の家に招かれたかのようなリラックスする空間で、おいしいお料理のレシピやテーブルコーディネイトが学べる教室が大人気。主宰する中村美穂さんにお話を伺いました。

レストランで始めた料理教室を自宅で

 大きな窓の向こうに広がる木々のグリーン、どこからか聞こえる小鳥のさえずり、キッチンから漂ってくるおいしそうな匂い……。

 仲村さんのご自宅を訪れると、五感が心地よく刺激され、たちまちリラックスした気分になります。

「教室に通ってくださる生徒さんからもよく”居心地がいいから、つい長居したくなる”と言っていただくのですが、とてもうれしいですね」と仲村さん。

 千葉のご自宅でお母様と主宰する料理サロン『Y’s Table.』は大変な人気で、都心はもとより、遠く九州から通う生徒さんもいるそう。海外赴任中の方が夏休みの一時帰国時に評判を聞きつけて習いに来ることもあるといいます。

 そもそも料理研究は、以前、ご家族で経営していたレストランで始めたものでした。

「欧風家庭料理をお出ししていたのですが、お客様から”レシピを教えてほしい”とのご要望が多く、ランチとディナーの間を利用して教室をするようになったのです」

その後、レストランはクローズしましたが、お料理教室はそのまま自宅で続けることになりました。

お皿に絵を描くような盛りつけが得意

 実は、中村さんは、イラストレーターとして、有名食品メーカーの商品パッケージのイラストを描いたり、雑誌などの挿絵を手がけたりするほどの実力の持ち主。職業柄、洗練された色合わせを考えながら、お皿に絵を描くように自由な発想で料理を盛りつけていくのはお手のものです。

 教室では、毎月、大きなテーマを決めて、それに合ったメニューやテーブルコーディネイトなどを提案していくそうですが、料理のおいしさはもちろんのこと、洗練された美しい盛りつけや、器やクロス類の選び方なども学べるとあってとても好評です。

「イメージをかたちにしていく作業ってとても楽しいです。絵を描くことに似ているかもしれませんね」

もっと気軽に楽しくおもてなしを

 多くの人がつい、気負ってしまいがちな”おもてなし”を、もっと気軽に楽しんでほしいと、中村さんは話します。

「おもてなしだからといって、特別な準備は何もいらないんです。手に入りにくい食材や高価な食器を使う必要もありません。普段から作り慣れている料理を心をこめて丁寧に作って、ベーシックないつもの白い器に少しだけよそゆき風に盛り付けるだけで、十分なおもてなしにふさわしいものにグレードアップできると思います」

 さらに、テーブルに季節感を盛り込むことがコツだといいます。

「花やグリーンをさりげなく飾ったり、季節に合ったテーマカラーを決めたりするのもいいですね。たとえば、今日のテーブルは初秋にふさわしい深みのある赤をキーカラーにしました。ダリアの花やお料理に使ったチェリーやベリー、イチジクなどをアクセントにして、シックな雰囲気にまとめてみました」

  • チェリーをあしらったパンケーキ(右)やベリーとライムのティーソーダ(左上)、シックなコーヒカップ(左下)などを揃えて、おもてなしの準備

コツさえつかめば素敵に盛りつけられる

 確かに、素焼きの花器に生けられた、少し紅葉しかけた枝やクロスのベージュ、着ているブラウスの色まで調和して、中村さんらしいセンスのいい空間が見事に完成しています。

「みなさんよく、お料理は作れても盛りつけのセンスがなくて……とおっしゃるのですが、ちょっとしたコツさえマスターすれば、誰でも素敵に盛りつけられますよ」

 そんなコツの数々を一人でも多くの人に知ってほしいと、中村さんは昨年、盛りつけの本を出版しました。本の中で紹介しているお料理のスタイリングや写真撮影、イラストもご自身が担当しています。

「手軽なランチのおもてなしを想定して、メニューはサラダとパスタとスイーツのスタイルで考えました。それぞれのメニューで、簡単にできて美しい盛りつけのルールを提案しています」

 たとえば、サラダなら、直径26~27cmの白い平皿を使う、器の余白を生かす、立体感や動きを出す、など、どれもとてもわかりやすく、納得できるものばかり。すぐにやってみたくなります。

「家族で食べるときは大きな器にどーんと盛ってそれぞれが取り分けるサラダなども、一人ずつ控えめの量で盛りつけるだけで、ぐっとおしゃれに見えます。あまり難しく考えず、手を抜けるところは手を抜いて、楽しんでほしいですね」

生ハムと秋の果実のサラダ

材料(2人分)
生ハム 8枚
イチジク 2個
ぶどう 10粒くらい
葉野菜※レタス・ルッコラ・クレソン・ベビーリーフなど 適量
ディル(飾り用) 適宜
ドレッシング
ホワイトバルサミコ酢 大さじ1
はちみつ 小さじ1
小さじ1/3
粗挽き黒こしょう 少々
オリーブ油 大さじ2
作り方
  1. ドレッシングの材料をあわせる。
  2. イチジクは皮を向いて4~6等分に切る。ぶどうは皮をむいて丸ごと、または皮つきのまま半分にカットする。
  3. 葉野菜は洗って水気を切り、冷やしておく。
  4. 器に3を盛り、生ハム、イチジク、ぶどうを、野菜の隙間から見えかくれするようにバランスよく盛りつけ、あればディルをちらす。
  5. いただく直前にドレッシングをかける。
盛りつけのポイント
 葉野菜は山高に盛りつけて、立体感を出しましょう。イチジクやぶどう、生ハムは、ピンク~パープルのグラデーションを楽しみながらバランスよく配置します。葉の上にのせるだけでなく、葉の隙間に差し込むように盛りつけていくことで、歯の間からのぞくような雰囲気に仕上がり、きれいです。

※虹色通信 2013年秋 号より

料理教室「Y’s Table」主宰

中村 美穂

1971年、神奈川県横浜市生まれ。イラストレーターとして雑誌や広告などの挿画を手がける一方、雑誌へのレシピ提供など料理の仕事にも携わるように。現在は、自宅でサロン形式の料理サロンをお母様とともに主宰。

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