インタビュー

エッグアートの魅力をたくさんの人に伝えたい

エッグアート講師兼田 佳子

エッグアートは卵の殻に精密な細工や数々の装飾を施したもの。新しい生命を包み込んでいる卵は誕生や復活のシンボルとされていることから、エッグアートをお祝いごとの贈り物にする習慣も。魅力的な作品づくりで知られる兼田さんを訪ねました。

卵の殻が宝石のような美しい作品に変わる

 卵の殻がまるで宝石のような美しい作品に変わるエッグアート。兼田さんはご自宅でエッグアートの教室を開き、オリジナル作品の注文販売も行っていらっしゃいます。

 兼田さんが初めてエッグアートに出会ったのは、アメリカから帰国した友人の家に遊びに行ったときのこと。そこに飾られていた宝石箱のキラキラとした輝きに一目で心を奪われたといいます。

「それが心のどこかに残っていたのでしょうね。15年前、下の子が2歳のとき、塾通いを始めたのですが、その塾の前にたまたまエッグアートの教室があるのを見つけ、”これだ!”と思って、すぐに飛び込みました」

 習えるのは、子供を塾に預けているわずかな時間だけ。一度に3種類ほどの作り方を習い、宿題にして自宅に持ち帰っては夢中になって作り続けたといいます。

 兼田さんが習ったエッグアートは”カリフォルニアファンシーエッグ”と呼ばれるもの。エッグアートの歴史は長く、帝政ロシアやヨーロッパの貴族の間で広まっていたものがアメリカに伝わり、ポピュラーになったといいます。30年ほど前に初めて日本に伝えた第一人者が、兼田さんが師事するわたべ和美先生です。

「先生の作品は『徹子の部屋』や『笑っていいとも』などで紹介されるほど有名なのですが、私の作品も、『スッキリ』や『モーニングバード』に出させていただいたんですよ」

 作ることがもともと大好きだという兼田さんは、結婚前からパン・洋菓子教室の講師を務め、今も教室のメニュー作成などに携わっているそう。ほかにも、プリザーブドフラワー講師や華道教授の資格を持ち、最近では茶箱の講師の資格取得を目指しています。

「お稽古ごとって、すべてがつながっているんです。色づかいやデザイン、センスなど、今まで学んできたことが全部、エッグアートにも生かされているように思います」

  • 緻密な作業の果てに完成した美しい作品の数々。クチコミですぐに注文が舞い込むそう。新作を楽しみにしているリピーターも多い。

完成を想像して試行錯誤。充実した時間を過ごして

 エッグアートで使う卵の殻は、オーストリッチ、アメリカンダチョウ、グース、ダッグ、チキン、ウズラ、ヒワなど。大きいものは直径17cmほどで、小さいものは1.5cmほどです。それらを使って、宝石箱や人形、馬車、ティアラ、イースターエッグ、ハロウィングッズ、兜、お雛さまなど、さまざまなものを作ります。

「作りたいものを決めたら、卵の殻を製図機に入れて線や模様を描き入れ、専用の機械を使って細かい部分までカットしていきます。その後、一度洗って薄皮を全部取り除いてから、アクリル絵の具で色付けし、スワロフスキーやストーン付きのチェーン、金の糸、ビーズ、シルクリボンなどで装飾していきます。もともと壊れやすい素材なので、作業には根気や集中力が必要ですが、制作中は、完成を想像して試行錯誤しながらも充実した時間を過ごすことができます」

 兼田さんの作品は、ベースは白くして、全体を淡いトーンで仕上げることが多いそう。ロマンチックな雰囲気の作品がお得意です。

「洋服やバッグ、雑貨など、美しいものをたくさん見ることが作品づくりのヒントになりますね。片方だけ残ったピアスやお菓子に付いていた小さなリボンなどもとっておいて、装飾に使えたりするとうれしいです」

アラカルトで楽しめるサロンのような教室を

 作品を作るのは、決まって夜。家事を全部終えてからアトリエに籠り、根を詰めると夜中の2時、3時までになることもあるといいます。

「いずれは今まで学んできたことを全部生かして、今回はエッグアート、次回はパン作り、などというようにアラカルトの教室をやりたいですね。趣味の合うみなさんと一緒にいろんなことを楽しめるサロンのような場を作って交流していけたらと思います」

  • 1. 市販の鶏卵を使用。目打ちなどで卵の底の中心に8mmほどの穴を開ける。
  • 2. 穴から卵の中身を全部出す。スポイト使って空気を入れるのがコツ。
  • 3. 卵の表面の適当な場所に、好みの図柄のシールなどを貼る。
  • 4. ツヤを出すため、手芸用のニスなどを卵の表面全体にハケで塗る。
  • 5. 穴に竹串を刺して乾かしたら、穴を隠すようにしてリボンを周囲に貼る。
  • 6. 完成したところ。アクリル絵の具で色を塗ったり、絵を描くのもいい。

※虹色通信 2015年春 号より

エッグアート講師

兼田 佳子

カリフォルニアファンシーエッグ講師として活躍中。自宅で教室『Chou Chou(シュシュ)』を主宰する傍ら、作品の注文販売も行う。「お教室では、同じ材料を使いながらも、それぞれ違った作品に。終わった後はティータイムに花が咲きます」