手作りの料理で人を喜ばせることの幸せ
大きなテーブルに並んだおいしそうな料理とともに、笑顔で出迎えてくださったのは、料理研究家の中本ルリ子さん。おしゃれで簡単、野菜やフルーツをたくさん使用したレシピには定評があり、特に若い主婦層に人気です。
中本さんが料理家になった原点には、幼い頃の記憶があります。実母が亡くなった後、継母からの厳しいしつけと心無い罵声の中で成長し、小学生の頃から家族の食事を作っていたといいます。長く心に溜め込んでいたものが爆発したのか、思春期には非行に走り、ヤンキー生活を送ったこともありました。
「でも、誰かのために何かを作って、喜んで食べてもらうのが好きだったんですよね。ヤンキーなのにクッキーを焼いて、みんなに配ったりしていました(笑)」
高校卒業後、20歳で結婚し2人のお子さんを授かるも、まもなく離婚。シングルマザーとして、平日は事務員、土日は司会業と必死で働いてきた中本さんでしたが、お子さんたちが成長するにつれて、自分が本当にやりたいこと今度は自分のためにやろうと思ったといいます。
2つの仕事を掛け持ちし、料理の勉強に毎月、札幌から上京
「そのとき、真っ先にかんだのが、やっぱり料理だったんですね。家族や子ども、大好きな人たちのためにおいしい料理を作って喜んでもらえる幸せを多くの人に伝えていきたいと思いました」
それからは、仕事を続ける傍ら、住まいのある札幌から東京まで毎月、フードコーディネイト教室に通って、念願の料理の道へ。その後、自ら主宰する料理教室と食品メーカーが主催する料理講座を合わせた1ヶ月の平均受講者数が約百名を超え、10年間で1万2千人以上が受講するほどの人気になりました。テレビ出演やレシピ本の出版と、まさに順風満帆でした。
- (右上) 一般向けの料理教室の他に、料理家養成講座も開講。これまでの10年間で12,000人を超える受講者たちに料理を教えてきた中本さん。
- (右下) フムス(ヒヨコ豆のディップ)をフランスパンに乗せて。オイル控えめにできるのも手作りならでは。
作る人も食べる人も笑顔になれるような料理を
「今年3月、思い切って東京にやってきました。これを機に、新しい分野の仕事にもチャレンジしようと思っています」
最近は、自宅でサロン形式の料理教室を開くとともに、企業やお店のレシピ開発や監修なども手がけています。
「これからとくにやりたいのは、シニア女性向きのメニューや商品の開発。女性って、子育て中は栄養のことなどもちゃんと考えて食事を作るけど、子どもが巣立ってしまうと、とたんに食生活が乱れがち。自分一人の食事になると、ありあわせのもので済ましてしまうことも多いと思うんです。そんなとき、手軽に食べられて、しっかり栄養も摂れるようなものを提案していきたいですね」
おいしい料理は、心を伝える大切なツールだと話す中本さん。
「”ごはんは笑顔で食べるべし”というのが私のモットー。おいしい料理を食べると幸せな気持ちになるし、一緒に食べている人と話も弾みます。これからも、私の料理で、一人でも多くの人を笑顔にすることができたら嬉しいです」
新しく作った会社の名前は『アシェル』、ヘブライ語で「幸せ」という意味だそうです。そこには、料理を通してみんなに幸せを届けたいという中本さんの願いが込められています。
豚バラ肉(ブロック) | 500g |
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塩 | 5g |
セージ(生) | 4枚 |
ズッキーニ(黄) | 1本 |
小玉ねぎ | 4個 |
ローリエ(ドライ) | 2枚 |
白花豆(固ゆで) | 1/2カップ |
トマト缶 | 1缶 |
種無しプルーン | 4個 |
サラダ油 | 小さじ2 |
塩・黒こしょう | 適量 |
- 1. 塩豚を作る。豚肉に塩をまぶし、セージ2枚、ローリエと一緒にビニール袋に入れ、密閉して一昼夜冷蔵庫で寝かせる。
- 2. ズッキーニは1.5cmの輪切りにし、小玉ねぎは皮をむく。塩豚は2.5cm幅に切る。
- 3. 厚手の鍋にサラダ油をひき、残ったセージ2枚を焼いて香りを油に移す。このセージは飾りとして使用するのでとっておく。
- 4. 豚肉の表面をこんがりと焼く。
- 5. トマト缶、プルーンを加え、ふたをして弱火で1時間煮込む。
- 6. 白花豆、ズッキーニ、小玉ねぎを加え、さらに30分程煮込む。
- 7. 塩、黒こしょうで味を調え、皿に盛ったらセージをのせてできあがり。
※虹色通信 2015年秋 号より
料理研究家
中本ルリ子
シングルママとして2人の子どもを育て、子どもたちが自立したのを機に料理家に転身。2005年より食品メーカーのレシピ開発や各料理講座の講師として活動を始める。2015年から活動の場を札幌から東京に移し、少人数制で4名まで、デモンストレーションのレッスンを開催中。