体の声に耳を澄まして本来の自分を取り戻す
ハワイの雄大な海や山が目に浮かぶようなフラソングが低く流れるなか、波のようにゆったりとした優しいリズムでロミロミマッサージの施術を行うトシミさん。
「ロミロミ」というハワイの言葉には、「手から伝わる愛情」という意味があるそう。指や手のひら、ひじ、腕全体を使って、筋肉をもみほぐし、身体のゆがみを整え、身体を温めながら疲れや痛みを開放していきます。
「ハワイの先住民の家庭に代々、口伝で伝わってきたこのろみろみを、心の遺産として世界中の人々に初めて教え始めたのが、今は亡きアンティ・マーガレット・マシャド・という女性です。日本では、マッサージばかりがクローズアップされていますが、もともとは”家族”や”文化”、そして何より”愛”をテーマにした伝統療法がロミロミ。身体の声に耳を澄まし、身体と対話することで、本来の自分を取り戻していくさまざまなケアがあるのです」とトシミさん。
呼吸法や食事療法から夢診断まで、その方法は多岐に渡りますが、すべてに共通しているのは、自然とのつながりを回復すること。自然の一部として生まれてきた人間は「そもそも調和のとれた完璧な存在で、愛に満たされているとロミロミでは考えます。さまざまなストレスなどが原因でその調和が失われると、そのサインとして心や身体にトラブルが現れるので、”生まれたての赤ちゃんに返す作業”が必要になるのです。
「マッサージなどによって本来の自分のバランスを取り戻すことができれば、自然治癒力がぐんぐんアップするのでさまざまな不調は自然によくなるんですよ。気力も湧いてくるし、お肌もきれいになります」
そう話しながら、マッサージを続けるトシミさんの動きはとても軽やかで、まるでダンスを踊っているかのように楽しそうです。
「よく”長時間マッサージをして疲れませんか?”と心配されるんですが、強い力は必要ないので、全然疲れないんですよ。施術している私自身のバランスも整うのです」
愛を注ぐにはまず、自分の水がめを満たす
トシミさんがロミロミと出合ったのは、20代の頃、航空会社に勤務する傍ら、休暇をとってよく出かけていた”旅”がきっかけでした。
「タイ、インド、バリ、オーストラリアといろいろな土地を回りました。オーストラリアに滞在していたときに、ふらりと立ち寄ったハイビスカスガーデンという場所で、初めてロミロミを知ったのです。それがきっかけで、ハワイに渡り、本格的に学ぶようになりました。 」
知れば知るほど奥が深いロミロミの世界。すっかり夢中になったトシミさんは、継承者である先生方に信頼と愛を与えられ、多くの技術と叡智を身につけたといいます。13年目を迎える今でも「学びは永遠」とハワイを訪れトレーニングをしているとか。
「ハワイには、私が幼い頃に感じていたすべてがありました。豊かな自然、家族のつながり、人のぬくもり……。ロミロミは単に高い技術を学ぶだけではなく、生まれ育った土地を愛し、家族や友人を大切に思いやり、何よりも自分自身がいつも幸せを感じられるようになってこそ、その深い叡智や技術を人の与えられるものだと思います。
「私が好きなハワイの言葉に”愛を注ぐにはまず、自分の水がめの中をいっぱいにしなさい”というものがあります。愛情豊かな人になるには、自分自身を愛することこそが大切だというロミロミの教えは、家族や周囲の人のために献身的になって、つい自分のケアを後回しにしてしまいがちな日本の女性の心にも深く響くものだと思います」
サロンを訪れる方が永遠に美し花を咲かせるように
8年前にオープンしたハワイアンロミロミサロン「マウラニ」は、今では自由が丘、表参道、青葉台と3箇所に。「ロミロミスクール」も開設し、後進の育成にも力を注いでいるトシミさん。
「サロンの名前『マウラニ』は造語で、ハワイ語の”永遠”と”美しい花”を合わせて作りました。ここを訪れる方がみんな、自分らしい美しい花を永遠に咲かせ続けてほしいという願いを込めたのですが、最近、ハワイの人たちから”マウラニという言葉には、命、人生という意味があるんだよ”と聞かされたのです。偶然とはいえ、これはとてもうれしかったですね」
施術の予約が入ったその瞬間から、サロンを訪れるお客様を思って、最高の状態で迎えられるよう準備をするというトシミさん。
「お客様に接するときはいつも、その方の良いところを全身で感じるようにしています。だから、私自身も喜びで満たされるんですよ」
- 1. 3つのピコ(頭頂・お腹・産道)がまっすぐ一直線になる姿勢が基本。鼻から息を7カウントで吸ったら、一瞬息を止め、7カウントで口からゆっくり吐き出す。
- 2. 息を口元まで上げるようイメージしながら7カウントで鼻から吸い、一瞬息を止めてから、その息を口から体内に入れるようイメージして7カウントで吐く。
- 3. 息を頭上まで上げるようイメージしながら7カウントで鼻から吸い、一瞬息を止めてから、その息を頭から入れて全身をめぐらせるイメージで7カウントで吐く。
※虹色通信 2013年夏 号より
株式会社マウラニ代表取締役、JLTA日本ロミロミセラピー協会理事
Toshimi
愛媛県松山市出身。幼い頃からボランティア活動が大好きで、航空会社に就職後、青少年の育成、心のケアに身を捧げるカフ・ケアロハ師に師事。日本にも同じ環境や施設ができることが夢。2児の母、妻、そしてロミロミ講師として、日々ハワイを愛する人たちと活動の場を広げている。